枝幸村遊廓　　は根幸郡枝幸村に在つて、北見線小頓別駅か
ら東北へ約九里、駅からは定期乗合自動車の便があつて、妓
幸停留所で下車する。
　明約卅年年頃に、此の地方の至る処から砂金か出たので、
其の頃は茲の全盛期だつた。其の前迄は一漁村の「ゴケヤ」
と云ふ私娼窟だつたが、明治廿八九年頃に遊廓と成つたもの
である。目下貸座敷は三軒残つて居て、娼妓は九人居る。皆
北海道の女計りだ。写真店で廻し制だ。御定りは三円で台の
物が附く。芸妓の玉代は二時間一座敷二円。妓楼は北開楼、
栃木楼、成田楼、の三軒。

稚内遊廓　　は北海道北見国稚内町にあつて、北海道最北端
の町で、宗谷線の終点になつて居る。鱒鮭の漁獲が多い処で
ある。
　目下貸座敷数は三軒、娼妓は約十五人程居り、三円で酒肴
がついて一泊が出来る。勿論遊興は廻し制だ。町の隅々迄も
北海の一漁津の気分が遺憾なく現れて居る。

船泊港遊廓　　は天塩国礼文島船泊村に在つて、稚内駅稚内
港から海上二三里の北方に当つて居るが、毎日数回稚内と船
泊間の定期船が出るので比較的便利である。海上約四時間。
　周囲約二十里の島嶼故、完く浮世を離れた感があつて、土
地の人々は皆人情が濃厚である。先づ北国の独特な島気分と
でも云ふべきものだらう。「ほかに宝や名所もあれど、春の
鰊に夏の昆布、沖にかもめの啼く声聞けば、礼文暮しが止め
らりよか」と云ふ里謡を見ても其の大体を想像する事が出来
やう。此処の遊廓は私娼の風紀を取締る為めに、明治三十年
頃に出来たもので、目下貸座敷が三軒あつて娼妓は十一人居
るが、全部北海道の女である。中には二枚鑑札の女も居る。
店は陰店を張つて居て居稼ぎ制、客の廻しは取つて居る。御
定りは四円五十銭で台の物が附く。鯉、鮒、蛯等が名産であ
る。娼妓は鶴亀楼、常盤楼、栄楼の三軒である。

瀬棚町遊廓　　は北海道後志国瀬棚町にあつて、日本海岸の
一漁津である。妓楼約四軒娼妓廿五入居る。

静内村（下下方）遊廓　　は北海道静内郡静内村（下下方）
にあつて、妓楼一軒娼妓は十人程居る。

古平町遊廓　　は北海道古平郡古平町にあつて、妓楼一軒八
人の娼妓が居る。

石狩町遊廓　　は北海道石狩郡石狩町にあつて、妓楼約三軒
十五人の娼妓が居る。


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